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§ 龍王の巫女姫 §
第18章 貴方に届けたい
それは湖だった。
「……」
そういえば先ほども、遠くに小さな湖を見かけた。
“ なんだろう…この懐かしい感じ ”
深い緑と、透き通った水。
そうだ、この空気の香りは──
「…もしかして、この森」
「気付いたのか?」
前方の炎嗣が振り返る。
「おそらく、そう遠くはない。お前の村に──」
「峭椋村( ショウリョーソン )……!?」
水鈴が はたと立ち止まる。
........
「──…行きたくないか?」
「…っ…だって」
戻れるのだろうか、自分は。
自分の運命はあの村から動き出した。
あの地獄の光景から、自分の日常は変わったのだ。
水鈴は怖くて仕方がなかった。
けれど…
“ いつまでも逃げ続けるわけには いかないの…? ”
全ての原点に、戻らなければ。
「…行きます」
意を決した彼女は炎嗣の隣まで走った──。