この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
§ 龍王の巫女姫 §
第18章 貴方に届けたい
いつもと違う方向から村に入った。
その頃には、水鈴は両手で炎嗣の衣を掴み、彼の後ろに隠れるように歩いていた。
「着いたぞ、水鈴…」
そして…恐る恐る村を見た──
「……っ」
最後の記憶では、村は火事で真っ赤であった。
今は当たり前だけれど火は消された後で、黒く燃え朽ちた家々の名残が並んでいるだけだった。
土台だけ残ったそれらの家は、こんなものだったかしらと不思議になるほどに小さい。
家の裏にある畑は、手入れされることなく荒れ果てていた。
「みんなは…?」
水鈴はひそかに胸を撫で下ろしながら炎嗣に問いかける。
あの夜、いたる所に転がっていた村人の遺体はそこになかった。