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§ 龍王の巫女姫 §
第19章 神への捧げ物
礼をしようと頭を下げた
その視界に…
「──…あ、手にお怪我をしています」
「ああ…」
小さな切り傷をつけた炎嗣の手を見つけた。
「どこかの蔦( ツタ )で切りつけた。ふっ…別にたいした怪我ではない」
水鈴に言われて思い出したのか、自分の左手の甲にある傷の具合を確認する。
彼はたいした事ではないと言うけれど…
「もし毒蔦だったら大変です!この近くに消毒用の薬草が生えているから持ってきますね」
「は?わざわざ面倒だろう」
「面倒だなんて。…待っててくださいっ」
水鈴は一度、空の様子を確認した。
茜色が徐々に薄暗く侵食され、夕刻に終わりを告げようとしている。
“ でも急いで採りに行って治療をすれば、暗くなる前に森を抜けられるはずよね ”
御堂の中で待つように念を押して、水鈴は森に入ろうとした──
「…待て、水鈴」
「…?」
そんな彼女の手首を、炎嗣が掴む。