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§ 龍王の巫女姫 §
第19章 神への捧げ物
そそのかしたのは俺だ。
自分を抑える自信がないからだ。
「手間がかかる女…だよな」
柄にもない。王である俺が、女ひとりの扱いにこれほど手こずるとは信じられない。
王宮に連れてこられ
王となることを受け入れた時
心に決めた筈だ。
非情な王となると──
誰の情にも流されないと。
だが《龍の子》として手にいれたあの女は
「……っ」
気をかけてやらないと
あっという間に散ってしまう
捕まえたと思っても手応えを感じさせないあの女はいつも涙を流していて──
“ 殺すわけにはいかない ”
俺のもとにいる水鈴が再び死を選ぼうと言うのなら
それを俺は望まない。
「お前だけは……」
お前だけは死なせない。
神の気まぐれの犠牲になるのは
" あいつ " だけで十分なんだ。
──
カサッ
「──…水鈴?」
その時、外からの足音が耳に届いた。
炎嗣は祭壇に背を向けて堂の戸を開けた。