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§ 龍王の巫女姫 §
第19章 神への捧げ物
しかし外にいた人物は彼の予想と違っていた。
「…チッ」
舌を打った炎嗣の手は瞬時に、腰に下げた湾刀にかかる。
それは何故か──。
木の後ろから姿を現したのは齢 四十ほどの初老の男だ。
その男は、意識のない女を肩に担いでいる。
「…そいつに何をした」
お前は誰だと問う代わりに、炎嗣はそう言った。
刀はまだ抜いていないが…男に向けた炎嗣の目付きはまるで切っ先のような鋭さだ。
「心配か?殺してはおらぬ故、案ずるな」
「当然だな。もしそいつが息をしていなかったとすれば…お前の死に様は語るに酷だ」
「それは恐ろしい…」
薄ら笑いをその顔に浮かべた男は、あまり御堂に近付こうとはしなかった。
森から出たところで立ち止まる。