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§ 龍王の巫女姫 §
第3章 永久( トワ )の別れ唄
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意識してはダメ…意識してはダメ…
そう思うほどに、自然と目が惹き付けられる。
何故なら彼の身体はしっかりと《男》で。穏和であるが故に忘れそうになる彼の強さを彷彿させる逞しさがあるからだ。
二度ほどだが、森を彷徨く賊の男達から守ってくれたこともある。
「──…//」
思えば、彼の身体をこう間近で見たのは初めてだった。
「わたしの顔が赤いだなんてどうしてわかるの?」
思わず話をそらした水鈴。
しかし今の花仙は少し意地が悪いようだ。逃げることを許さない。
斜め上を見上げたまま意味ありげに語りだす。
「" 視る "ことはできませんが…、貴女を" 感じる "ことはできますから」
「…っ感…じる…?」
「人にも物にも、気配がある。皆が息をしている。…私の目は其等を感じるのです。貴女がいま、怯えた兎と同じ表情で私を見詰めていることも…」
「兎…って…ッ」
「クスクス、本当ですよ?どうして良いかわからずに戸惑う水鈴様を感じます」
いつもは大人しく素っ気ない花仙は時に、こうやってわたしをからかうことがある。
そんな時は決まって、女のわたしがドキリとしてしまうような艶やかな声で……
大人の余裕というのを醸し出しながら。
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