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§ 龍王の巫女姫 §
第3章 永久( トワ )の別れ唄
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「…からかわないで下さい…っ」
無駄と知りつつ顔を背ける水鈴。
治療の手も止まってしまっている。
「──ですが安心してください。
私が貴女を " 視る " 事は叶いませんから」
「……!」
急に…彼の声が切なさを含む。
「水鈴様の喜びを感じても、どのような御顔で微笑んでいるのかは視えません。たとえ、貴女の視線を感じても……」
彼が振り返った。
背けていた顔を咄嗟に戻して彼を見上げていた水鈴と、視線が合った……ような気がした。
──否、彼の目は布で隠されているのだから。
「…どのような瞳が、私を見上げているのかはわからないのです」
「……」
「水鈴様の瞳は何色ですか?」
「…紫、です」
「その紫紺がどれほど輝いているのか…知りようもありません」
「──…」
──彼は見えないと言うけれど
わたしには見えた。
花仙の口許が、美しくて優しくて、そして哀しい微笑みを浮かべている。
きっと、その深い哀しみこそが
彼の微笑みをより美しくしているの…。
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