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§ 龍王の巫女姫 §
第19章 神への捧げ物
炎嗣は腹部に怪我を負っていた。
誰かにここまで引きずられてきたのか…その血は入り口まで繋がっている。
彼の意識はない──
けれど死んではいなかった。
「…起きて…ください…っ」
逃げないと、このまま焼け死んでしまう。
水鈴は彼を揺すったが目を覚まさない。
「出ましょう?…ハァ…ッ ね?炎嗣様──ッッここから出ましょう…!?」
頬の皮膚が熱で痛い。
炎が迫るにつれて地獄のような熱さが彼女を襲った。
「…出ない と…!!」
水鈴は彼の背後からその腕を掴み、精一杯の力で引っ張る。
とにかく御堂から出なければいけない。
「お願い…!! ケホッ…動いてぇ…」
しかし煙を吸ったせいか身体に力が入ってくれない。
炎嗣を動かすことはままならず
彼女は悲痛な声をあげた。