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§ 龍王の巫女姫 §
第20章 史書から消えた物語

少年の左肩から背中にむかって刻まれていたのは…三本の爪痕。
《 龍の爪を背負う者 》
──それこそが徴だ。
「確かに…間違いない…!」
役人の顔が曇る。
変わった物を目の当たりにした時の驚きと、おぞましい物への一寸の恐怖…
「……っ」
少年にとっては見慣れた表情だった。
「見るなじじい!…っ、さっさと…離せ!!」
「…お前…! 右丞相殿にむかって何て口を…っ」
「……っ、教育が必要なようだな…!」
暴言を吐かれたその役人は右丞相( ウジョウショウ )であった。彼は渋面をつくり少年を冷たく見下ろす。
「もうよい…私が陛下に申し上げる故、その子供は離れに閉じこめておけ」
「御意」
頭の上で勝手に展開される会話…
少年の我慢は限界だった。
隣の衛兵を蹴り飛ばそうとした
その時──
「……!」
彼の目は、廻廊を歩く女官に向いて止まった。

