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§ 龍王の巫女姫 §
第20章 史書から消えた物語
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「──…くそう!」
少年は頑丈な戸を思い切り蹴りあげる。
彼が入れられた部屋は、内装こそ違えど、牢獄よろしく徹底された戸締まり。
ここが王宮内の軟禁部屋だということを彼はまだ知らない…。
“ なんで俺がこんな所に… ”
都に住み着くようになってから半年ほどだ。
突然、衛兵達に捕まった時は死ぬことを覚悟した。
何故なら彼は
生きてゆくための手段として日々、盗みを働いてきたからだ。
その罪で捕らえられたのかと思った──しかし、そうではないらしい。
「…これが…何だって言うんだよ…」
自分の背に刻まれた三本の爪痕。
物心ついた時から、彼はそれを背負ってきた。
孤児院の子供はそれを見るたびに気味悪がったので、人目につけることはやめていたが。
物珍しさに、拐っただけか?
暇を持て余す宮廷の人間達だ。どうせそんなところだろう…。
「玩具にされてたまるか…」
少年は戸を破るのを諦めて
反対側の開口部に標的を変えた。
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