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§ 龍王の巫女姫 §
第20章 史書から消えた物語
声をあげて輪に入ってきたのは、窓越しに話したあの青年だった。
「蒼慶様…? 何故このような処にいらっしゃるのですか?」
「その子に会いに来たんだ」
蒼慶──何者かは知らないが、彼の姿を見て衛兵達がどよめいていた。
「…父上が呼んでおられる」
「まさか!まだ調査不足です!どこの馬の骨ともわからぬ小僧を陛下に会わせるわけには…っ」
「何かあったの?」
「昨夜の貴妃様毒殺に、関係している可能性が」
「ああ……」
石畳に膝をつけて押さえ込まれている少年に、蒼慶は " あの " 赤い目を向ける。
「件( クダン )の事件についてなら心配無用です。じきに焦った犯人がぼろを出してくるでしょう」
「…な…どういう意味ですかな」
「言葉通り──」
「……っ」
にこりと目を細めて笑った蒼慶から一時だけ赤色が消える。
次に瞼を開けた時──
その瞳は脂汗を浮かべた右丞相を射貫いていた。