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§ 龍王の巫女姫 §
第20章 史書から消えた物語
「行こうか」
蒼慶は少年の肩に手を置いた。
少年は彼の手を払ったが、ここは大人しく立ち上がって後について行く。
逃げるにしろ何にしろ…
この赤い目の青年の言うことを聞くのが得策だと判断したのだ。
───
「…おい、聞くけど」
「何?」
前を歩く蒼慶に少年が話しかける。
「さっき『父上が呼んでいる』って言ってただろ?…で その後あいつらが『陛下』って…」
「確かに、言ったね」
「ということはあれか?お前が李王の息子ってことになるぞ」
「……それは…」
鶯( ウグイス )色の短袍姿の蒼慶は、軽快な足取りで廻廊をどんどん進んでいく。
「それは、嘘」
「──はぁ?」
「あー、いや、父上が李国の王様なのは本当。ただ…父上が君を呼んでいるってのは嘘」
「…ぇ、いいのかよそれ…」
「あまり良くない。だから今から会いに行くよ」
「……!!」
王に会いに行く…?
“ それは不味い… ”
逃げなければいけないのに、これ以上警備の厳重な場所へ連れていかれることになる。