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§ 龍王の巫女姫 §
第20章 史書から消えた物語
「僕の背後を狙うのはやめたほうがいい。
──…無駄なことだから」
「…く…!!」
「──…ほら、行くよ」
蒼慶の指が、反撃されるかと怯んだ少年の耳を掴んだ。
「痛っってぇ!」
──で、そのまま引っ張る。
こうされるともう…抵抗のしようがなくなった。
遠くの臣下達が何事かと不審がるほどの大声を発しながら、彼は無理やり王の元へ連行される──。
てっきり王室に向かうのかと思っていたが、蒼慶が目指したのは、石灯籠が等間隔に並んだ池の畔……朱色の四阿( アズマヤ )であった。
そこには数人の宦官が控え、そして…ひとりの男が腰かけていた。
「──父上」
蒼慶が呼び掛ける。
「お身体の具合はいかがです?こうして外を出歩いて平気なのですか?」
「…蒼慶…か、その子は誰だ?」
四阿の中の男は、痛そうに耳をかばう少年に目を向けて蒼慶に尋ねた。