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§ 龍王の巫女姫 §
第21章 黒髪の兄弟は束の間に
すると建物の影から、のろのろと炎嗣が現れる。
「あいつ本当にしつこいな」
「…君が逃げなければ彼だって追いかけずにすむんだ」
蒼慶は呆れ顔で炎嗣をさとした。
「学問に興味がわかないのかい?」
「わくかよ、あんな退屈なもん」
学問といってもまだ読み書きのできない炎嗣は、文字を覚えることから入っている。
炎嗣はそこに楽しさを見いだせない。
「馬術の授業も受けていないと聞いたけど…」
「馬は乗りたい時に乗る、それだけだ」
根本的に、彼は何かを強いられるのが嫌いだ。
「そうやって周りを振り回すのを楽しんでいるようにも見えるが…、まぁ、振り回されている方もそれなりに楽しそうだけれど」
「…あ?何ぶつぶつ言ってる」
「──…僕の部屋に来ようか」
蒼慶は詩経をぱたんと閉じて、炎嗣を自室に連れていった。