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§ 龍王の巫女姫 §
第21章 黒髪の兄弟は束の間に
「国の道具になるなんてまっぴらだ」
「強情だな…」
何を言っても駄目なようだ。
恐らく炎嗣は今まで生きてきた世界の中で、国を…大人を…疑うように育ってきたらしい。
蒼慶は目を伏せて考えを巡らせる。
どのように彼を導くのが正解なのだろう。
「……まぁ それならそれで」
「……?」
「逆に良いかもしれない」
逆に、とは──
「何のこと…!」
「よし、君はこれまで通りに行動すればいいさ。官女達を振り回し、学者の忠告に背を向ければいい」
「──はぁ?」
「…ただし、逃げたぶんの勉強は僕が教える」
蒼慶は何喰わぬ顔でそう言い切ると、手近な筆をとって紙に文字を綴り始めた。