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§ 龍王の巫女姫 §
第21章 黒髪の兄弟は束の間に
「何言ってる?可笑しいだろ
どうして俺がお前なんかに──ッッ おつ!」
ふざけてるのかとわめいた炎嗣──
蒼慶は急に立ち上がり、文字を綴った紙を彼の顔に突き付けた。
「──…これ、読める?」
大きな紙の中央に、二つの文字。
当然だが炎嗣には読めない。
「知らない」
「《炎嗣》、君の名前ね」
それを聞いたしかめ面の炎嗣の眉が、ぴくりと反応を示す。
「俺の…?」
「書けるようになりたいかい?」
「……っ」
僅かな興味が傾いたかと思ったが、ほくそ笑む蒼慶を見て反抗的に顔をそむけた。
「どうでもいい…!」
「…で、これが僕の名前」
「聞いてるのかよ」
「聞いてるよ」
さらさらと埋められていく紙面。