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§ 龍王の巫女姫 §
第21章 黒髪の兄弟は束の間に


確かに色はどちらも黒い

だが同じ筈がないじゃないか。


しっとりと艶があって、それでいて香( コウ )の薫りを仄かに纏う蒼慶の黒髪。

対して自分は…手入れなんて無縁の、邪魔にならぬよう短く切り込んだだけの髪。


そうだ、髪ひとつをとったとしても
これほどに違うんだ。


「お兄様って呼んでみる?」


なのにこいつは似てると言う。

似てるから兄弟なんだと譲らない。


「呼ぶわけないだろ」

「可愛げない弟で残念だよ」



蒼慶はもう一本の筆を取りだし、今度は一画ずつを丁寧に教えてゆく。

可愛いげのない弟、炎嗣は、黙りこんではいるが彼の説明を聞いているようだ。


そして蒼慶に促されて再挑戦。


まだ綺麗に書けない炎嗣は悔しそうにあぐらを組み直して、教えられた言葉をしたためた。


《 兄弟 》


この日…初めて、" 彼 " には家族ができたのだ。








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