この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
§ 龍王の巫女姫 §
第21章 黒髪の兄弟は束の間に
確かに色はどちらも黒い
だが同じ筈がないじゃないか。
しっとりと艶があって、それでいて香( コウ )の薫りを仄かに纏う蒼慶の黒髪。
対して自分は…手入れなんて無縁の、邪魔にならぬよう短く切り込んだだけの髪。
そうだ、髪ひとつをとったとしても
これほどに違うんだ。
「お兄様って呼んでみる?」
なのにこいつは似てると言う。
似てるから兄弟なんだと譲らない。
「呼ぶわけないだろ」
「可愛げない弟で残念だよ」
蒼慶はもう一本の筆を取りだし、今度は一画ずつを丁寧に教えてゆく。
可愛いげのない弟、炎嗣は、黙りこんではいるが彼の説明を聞いているようだ。
そして蒼慶に促されて再挑戦。
まだ綺麗に書けない炎嗣は悔しそうにあぐらを組み直して、教えられた言葉をしたためた。
《 兄弟 》
この日…初めて、" 彼 " には家族ができたのだ。