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§ 龍王の巫女姫 §
第21章 黒髪の兄弟は束の間に
パリン───ッ
「……」
「…ん?なんだ炎嗣、来ていたのかい?」
「…ああ」
書斎に続いている蒼慶の寝所に、いつの間にか炎嗣が訪ねていた。
戸を開けて入ってきた蒼慶の耳には、何かが割れた高い音がちょうど届く。
「嫌な音が聞こえたんだけど…、──…ああ、また茶器が割れているな」
見れば、御膳が並べられた円卓の足下に、無惨に砕け散った高級茶器があった。
中身の白茶が床に広がってゆく。
蒼慶はやれやれと溜め息を溢す。
「これで何度目?──また右丞相( ウジョウショウ )殿に嫌味でも言われたのかい?」
「──…馬鹿か、違う」
悪びれる様子もない炎嗣は、ふいっと顔を合わせようとしなかった。
「たまたま肘が当たっただけだ」
「ただの不注意ね…ハァ、気を付けなよ」
こう何度もたて続いたからには、不注意として片付けるには無理がある。
しかし蒼慶は詳しく問い詰めるのをやめた。