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§ 龍王の巫女姫 §
第21章 黒髪の兄弟は束の間に
「父上の容態については聞いたかい?」
「…聞いた。本殿から出てこれないらしいな」
李国の現王はいよいよ病が深刻になり、本殿の中の寝台から起き上がれなくなった。
それが前日の事だ。
朝廷では臣下達が騒ぎだし、宮中どこにいても不穏な空気が流れている。
国の混乱を招かないように、王宮の外には出回っていない情報だ。
「まだ意識はあるが国政には関われないだろうね。手癖の悪い連中が増えなければいいんだけれど」
「まぁ無理だろうな」
「…だろうね」
王が国政から退いた状況は、言ってしまえば見張り役がいなくなったという事だ。
普段は隠れていた欲が宮中に溢れる…世代の境目とは、必ずそういうものだ。