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§ 龍王の巫女姫 §
第21章 黒髪の兄弟は束の間に
建具の隙間から吹き付ける風が冷たい。
空気がひんやりと凍える、そんな季節だ。
炎嗣が皮肉な笑みを浮かべて話す。
「ふん…どおりで今日は、黒い " もや " が多い」
「…もや? それは…、君が茶器を壊したがることと関係あるの?」
「……」
既に何かを察しているらしい蒼慶が、意味ありげに聞き返した。
「だからわざとじゃないって言ってるだろ…っ」
「そうだったね、ごめんごめん」
炎嗣に否定された彼は、謝りながら壁に掛けてある上掛けを手にとった。
「外に出ようよ」
「何処にだ?」
「外……あ、王宮の外ね。都に出ないか?」
「…?」
卓上の膳に手をつけず、蒼慶が部屋を出たので炎嗣もついて外に出る。