この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
§ 龍王の巫女姫 §
第3章 永久( トワ )の別れ唄

「もう夜になるのね…」
空を仰ぐ彼女は不安気に呟いた。
「…私は戻らなくては」
「…っ…そうよね、待って、すぐに治療が──、……あ、終わったわ…」
包帯を巻き終わり、湿布がきちんと固定されたかを確かめる。
最後に痛み止めの煎じ薬を飲ませて彼の治療は終わってしまった。
終わると同時に花仙は服をきれいに着付け直し、立ち上がって礼を言った。
「感謝します水鈴様。…おやすみなさいませ」
「はい…」
そうして帰ろうとする彼を
堂の手前に座る水鈴は…突然と呼び止めた。
「待ってください!」
「──?」
彼は軒先で振り返る。
「…どうかされましたか」
「……っ」
彼女は夜が怖かった
また、眠りにつけば悪夢が襲いかかる
…ひとりになりたくない
「……。怖いのです…」
俯いてしまった彼女の前に影がかかる。
戻ってきた花仙がその場に跪いた。
「…では、もう少しだけ残らせて頂きます」
彼はその後、堂の裏の釜戸で夕飯を作り始めた。

