この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
§ 龍王の巫女姫 §
第22章 蛇の落とし子
───春節祭の季節
元正月をまさに翌日に控えた夜のこと。
赤い提灯で彩られていた宮中に、突如として、炎の恐怖が襲いかかった。
本殿からは距離のある
官府の奥──獄舎で起こった火事。
それは無事に消し止められた。
そして火の鎮火とともに
ある、悲劇が、王のもとへ伝えられた。
蒼慶が死んだ───
炎嗣の謀殺を企んだ蒼慶は
自身の過ちを認め、その行いを悔い
火を放って自ら命を落とした──と。
…誰もその話を信じなかった。
しかしどういうわけか、重臣達は次から次へと証拠を集めては、目の前に広げてきた。
それから宮中は二つの悲しみに包まれる。
《蒼慶》を失った悲しみと
《龍の子》に裏切られた悲しみ
…しかしである。
そんな中で、国政を退いた筈の光丞帝が、ある日朝廷にその姿を見せた。
光丞帝は臣下達を静かに睨みながら口を開いた。
蒼慶という男は
この王宮に元より存在しなかった
───と。
今後、その名を口にすることを禁ずる。
それだけを命じて、光丞帝は朝廷を終わらせた。