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§ 龍王の巫女姫 §
第22章 蛇の落とし子
炎嗣はすべての報告を、桃源郷の離宮で知る。
「え、炎嗣様…!! 王宮の騒ぎをご存知なので?」
「──…」
離宮の管理を任されている呂( ロ )夫婦は、おろおろと混乱したまま炎嗣のもとにやって来る。
「…蒼慶様が存在しないなど…っ、そんな、あの方は何度も何度も…此処に来られていたのですよ!? 」
「……」
「陛下は何を考えてその様な仕打ちを蒼慶様に…」
「──…その名は禁句だ。打ち首になりたいのか」
「……!! …炎嗣様…」
花の無い桃の木々
見つめる炎嗣は、何を思っていたのだろうか。
彼は兄を愛していたのか?
だから兄を怨んでいるのか?
「俺は都へ戻るぞ」
ひとつ確かなことがあるとすれば
ただのひとり、炎嗣だけが、その目から涙を流さなかったという事だ───。