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§ 龍王の巫女姫 §
第23章 愛するあなた達へ
「炎嗣様はご無事ですか!?」
「……!!」
脈をとられていた腕を振り払い、水鈴は勢いよく上体を起こした。
「酷い怪我をしているの…っ、お腹から血が出ていたわ、それで……気を失っていたからわたしが助けないといけなかったのに、身体に力が入らなくて」
「……」
「一緒に逃げようとしたのに、わたしでは炎嗣様を運べなくて…ッ でも、助けたくて…」
水鈴はひとりで喋りながら、自身の右手を胸の前で握った。
この手にもっと力があればと嘆いている。
そんな彼女を前にして互いに顔を見回す女官達は、口許をゆるめて微笑むと、落ち着いた声で水鈴に声をかけた。
「ご安心下さい、陛下は無事で御座います」
「…っ…本当、に?」
「ちょうど昨夜に陛下はお目覚めになりました。傷口は深うございましたが、今では出血も止まり安定しております故…」
「……!」
話す女官を真っ直ぐに見る水鈴。
不安一色だったその顔が、徐々に元に戻ってきた。