この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
§ 龍王の巫女姫 §
第3章 永久( トワ )の別れ唄

「……!」
その演奏は釜戸で飯を炊く花仙の耳にも届く。
水鈴は目を伏せ手先に想いを集中させた。
彼女が弓で弾くごとに、震える弦は哀愁ある音色を周囲に響かせる──。
風でさざめいていた木々がしんと静まり
まるで二胡の音色に耳を傾けているようだ。
しかし彼女が聴かせたいのは森ではない。
彼女を守る大切な男へのささやかながらの恩返しだ。
音は聴こえる…平等に
彼女にも、森にも、花仙にも。
「極上の音色で…私の手元を狂わせる気ですか」
花仙のひとりごとは届かない。
けれど水鈴の想いは音にのって彼に伝わった。

