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§ 龍王の巫女姫 §
第23章 愛するあなた達へ
簡単な筈だ
「その男は…蒼慶は、確かに宮中( ココ )にいた」
「──…!」
「俺の兄は でたらめな罪状で捕らえられ、謀殺された。もしその身に何かがあれば 自身の存在を歴史から消し去って欲しいと…光丞帝に遺言を残して」
炎嗣の目が、背後の花仙を振り向きざまに睨む。
睨まれた花仙はじっとその視線を受け入れていた。
「…それは偽りです」
その声も落ち着いていた。
「真実だ」
「……もし、偽りだとしたら?」
花仙はもう逃げることをやめたのだ。
何故なら炎嗣が今、初めて蒼慶を…
" 自分 " を兄と呼んだのを聞いてしまったから…。
「もし君の兄が、死ぬことのできない臆病者だったとしたら?」
「蒼慶は臆病ではなかった…」
「そうじゃないんだ…炎嗣」
二人の間を吹き抜けた風が、牡丹の葉を撫でて空に吸い込まれる。