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§ 龍王の巫女姫 §
第23章 愛するあなた達へ
彼は死にたくなかった。
ふざけた神託をもたらした巫女と、それを利用して自分を王宮に連れてきた王を恨んでいた。
なにより…こんな運命を自身に背負わせた神を恨んだ。
“ 死にたくない… ”
大量の煙を吸ったせいで既に動かない身体──
「…ッ…ハ」
蒼慶が血の涙を流した刹那
彼は神の気まぐれによって救われた
…人は奇跡と称えるだろう。
否、それは只の気まぐれだったのだ。
──…意識を取り戻した時
蒼慶は、ぼろぼろの衣服を身に纏って都の喧騒の中を歩いていた。
斬られた両目から血が流れていたが
暗い通りで、俯いて歩く彼に目を留める街人はひとりとしていなかった。