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§ 龍王の巫女姫 §
第23章 愛するあなた達へ
「──私はその瞬間に、救われた気がした」
三年前の水鈴との出会いを、炎嗣に語る花仙。
「可哀想に──…その言葉は、弱った雛に彼女がかけた言葉だった。けれどあの時は、自分にかけられた気がしてならなかった…」
「…その一言で…救われたのか」
「単純だろう?」
炎嗣に顔を向けて、はにかむ様に笑う。
彼だってすぐには信じられなかったのだ。こんな簡単な言葉に…自分の心が動かされるだなんて。
自身を憐れむ暇もなかった
背負うものが大きすぎて……
いつ自分の《怒り》が暴走するかわからない、そんな恐怖と隣り合わせで……。
「水鈴様は不思議なひとだ…何故か、側にいるだけで安らぎを与えてくれる」
「…それは俺も、同じ様に感じた」
水鈴が与える安らぎは、きらきらと明るいものではない。
寧ろしっとりと…もの哀しく、心の闇に寄り添おうとしてくるものだ。