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§ 龍王の巫女姫 §
第23章 愛するあなた達へ


「…水鈴様の底無しの哀しみが、周りに安らぎを与えているのかもしれない」


哀しみからは、慈悲が生まれる。


怒りは破壊を生むだけだ。けれど祈りのように頬をつたい落ちる哀しみの涙は、誰かを慈しむ時と同じ温度をしているんだ。

怒りや恨みとは、まるで違う。


「……何を言っているのかわからない…!」

「すまない。…難しい事を話しているから」

「謝るな…ッ」


二人を包む空気が変化している。

炎嗣と花仙──否、蒼慶だ。


「お前はいい加減に、そうやって理屈っぽく話すのをやめろ」

「はは、悪い癖は治らないみたいで」

「……ち」

「炎嗣だって、人の顔をガン見する癖が直っていない。やめて欲しいと頼んだ覚えがあるけれど」


二人の兄弟は昔と同じ様に、築山を背にしてその陰に腰を下ろした。







「…でも……そうか、羨ましいな」


「誰がだ」


「…水鈴様が」


「──…」


「…それと炎嗣、君がね」





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