この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
§ 龍王の巫女姫 §
第23章 愛するあなた達へ

「…水鈴様の底無しの哀しみが、周りに安らぎを与えているのかもしれない」
哀しみからは、慈悲が生まれる。
怒りは破壊を生むだけだ。けれど祈りのように頬をつたい落ちる哀しみの涙は、誰かを慈しむ時と同じ温度をしているんだ。
怒りや恨みとは、まるで違う。
「……何を言っているのかわからない…!」
「すまない。…難しい事を話しているから」
「謝るな…ッ」
二人を包む空気が変化している。
炎嗣と花仙──否、蒼慶だ。
「お前はいい加減に、そうやって理屈っぽく話すのをやめろ」
「はは、悪い癖は治らないみたいで」
「……ち」
「炎嗣だって、人の顔をガン見する癖が直っていない。やめて欲しいと頼んだ覚えがあるけれど」
二人の兄弟は昔と同じ様に、築山を背にしてその陰に腰を下ろした。
「…でも……そうか、羨ましいな」
「誰がだ」
「…水鈴様が」
「──…」
「…それと炎嗣、君がね」

