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§ 龍王の巫女姫 §
第23章 愛するあなた達へ
「君達が羨ましい…」
「……蒼慶」
「…どうか今は…花仙と呼んでくれまいか?彼女が私に与えた名だ」
「女人のようだな」
「…ふ、そうだね。梅の精の名だそうだよ。私のような男には似つかわしくないけれど」
そう言って花仙は自分の手を陽の日に掲げた。
傷だらけのその右手は、あまりに多くの返り血を浴びてしまった手だ。
「──あいつらしい名前を付けられたな」
「……ああ」
しかし水鈴がその返り血に気付く筈もなく、傷だけを見ていつも彼を心配してくる。
それにも花仙は救われていた…。
新しい名前とともに生まれ変われるかもしれない。彼女を守る者として、いずれ舞い散るその日まで──。
そう思ったから、花仙は峭椋村にとどまったのだ。
「───炎嗣様!!」
「……」
「……水鈴」
その時、二人の前に飛び込んできた水鈴。
寝着姿に上掛けを羽織っただけの服装で、息を切らした彼女は目一杯の声で叫んだ。