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第23章 愛するあなた達へ

「……ふ、炎嗣は相変わらず不器用だ。見てごらんよ、水鈴様が怯えてしまっているじゃないか」

「…っ、放っておけ」

「怯えてなんて……ｹﾎｯ…ﾊｧ」


二人を見る花仙が微笑み

炎嗣は口を尖らせ、水鈴が顔を赤くする。


彼女が軽く咳き込んだので、花仙は水鈴に顔を向けた。


「此処の風は御身体に障りますよ。どうぞお戻り下さい、貴女の君主はお返しします」


「戻るって……?」


「宮中の、貴女の寝室へ」


「でも、花仙は？花仙は何処へ戻るの？」


「私は此処を去ります」


「……!」




何度目だろう


花仙が彼女の前から去っていったのは。




「…どうしても? 」

「どうしても、…で御座います」



いつでも水鈴は、去って欲しくなかったし


それは今だって変わらないのに……。




「…花仙は行ってしまうの? 」




ずっと自分を守っていてくれた花仙──



これからも、ずっと
一緒だと信じていたあの頃、から…



いろんな事があって
その度に涙を流して…



もう一度会いたいと願った


置いていかないでと泣きついた


想いを伝えて彼を惑わした


辛い真実など知りたくないと耳を塞いだ…