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§ 龍王の巫女姫 §
第3章 永久( トワ )の別れ唄
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彼が…布の下を人に見せることはない。
其処には《人》と変わらぬ目がふたつあった。
瞼を下ろしたその両目には
痛々しい傷痕が刻まれていた。
それは、刃物で斬られた痕であった。
「……っ」
美麗な形の彼の目が、くっと強ばる──。
それは恐る恐るといった感じで、長い睫毛を震わせながらゆっくりと開いていった。
..........
瞼が上がり、彼の前には《視界》が現れる。
「──…その様なお顔をなさっていたのですか」
スヤスヤと寝息をたてる水鈴の横顔。
目、鼻、眉毛に、唇…そして見事な銀髪
彼は初めてそれを見た。
この顔で、貴女は私に微笑んでいたのか
怒って頬を膨らませていたのか
ひとりの夜が怖いのだと…、不安で眉を寄せていたのか。
「…っ…何故、わからない」
だから言ったでしょう?
貴女は世間知らずなのだと。
男は焦って目を閉じた。
女は穏やかな寝顔で無防備に寝ていた──。
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