この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
§ 龍王の巫女姫 §
第25章 終章
「後宮( ココ )に来る理由など、お前に決まっているだろう…水鈴。これと言って用は無いが」
「用もないのに来て下さったの?」
「悪いか?」
「いいえ、嬉しいです」
龍紋の織り出された紺色の深衣姿の炎嗣を、水鈴はまぶしそうに見て笑った。
深みのある色合いが彼の美貌を引き立て、衿元の銀色の刺繍とあいまって、春の庭に負けないくらいに華やかだ。
それを彼に伝えると、炎嗣は顔をしかめた。
「俺は男だ…。華やかと言うのは誉め言葉か?」
「…ぇ…違いましたか…?」
「まぁ、いいが」
水鈴は自分の失言に戸惑ったが、とくに機嫌を害したわけではないらしい炎嗣。
彼は鷹の足に括り付けられていた白い紙を取ると、ゆっくりと腕を振って鷹を空に放った。