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§ 龍王の巫女姫 §
第25章 終章
空に帰った鷹は、見えない所に飛んでいってしまった。
「それは何です?」
「桃源郷からの手簡( テガミ )だ」
「桃源郷…、もしかしてお婆ちゃんたちから?」
水鈴の言うお婆ちゃんたちとは、呂夫婦のことだ。
細くたたまれた手簡を開いて、炎嗣はそこに綴られた文に目を通した。
この季節──桃源郷は最も美しく染まる。
その景色は息を呑むほど幻想的で、不治の病を患う者でさえ、それを見たならたちどころに治してしまうという言い伝えさえある。
炎嗣はその景色を既に見ているが、呂夫婦はこうやって、その素晴らしさを毎年のように知らせてくるのだ。
「炎嗣様は、お婆ちゃんたちと仲が宜しいのね」
「俺は預言の子供として王宮に連れてこられたが、此処に馴染めずに離宮ですごすことが多かったからな…。…俺も、蒼慶も」
「……そうけい…?」
「…っ…いや、気にするな」
…鷹がいなくなった園林に
小鳥の声が戻ってくる。