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§ 龍王の巫女姫 §
第25章 終章
「この程度で泣くな…!!」
「…泣きません…っ、でも」
「──…ッ 悪かった…、だから泣くな」
「……っ」
そこまで落ち込むとは思っていなかったのだろう…炎嗣は、焦燥して彼女の腕を掴んで揺さぶった。
片手を取り──そして
そこへ自分の手を合わせる。
「…、これは何ですか…?」
「お前の為に用意させた物だ。機嫌を直せ」
合わせた手を引くと、水鈴の掌に、蘭( ラン )の花を彫り出した髪飾りが置いてあった。
“ これ…都を二人で歩いた日に、炎嗣様が選んでくれた簪( カンザシ )… ”
それは元正月の二日前、春節の祝いで賑わう都…。
炎嗣が彼女の為に見立てた、菖蒲( ショウブ)色の簪である。
直後に水鈴は事故に巻き込まれ、彼女を庇った炎嗣は馬に蹴られて重傷を負ったわけだから…当然、買う暇などなかった。