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§ 龍王の巫女姫 §
第5章 炎の李王
ついたての奥に男が立っていた。
銀色の刺繍を衿にほどこした藍色の深衣姿で、肩先につくほどの長さの黒髪を、横髪を片方だけ結って反対側に流している。
歳は花仙と同じくらいか…
端正な彫りの深い面差しに、精悍な漆黒の瞳。
花仙の官能的な唇とは異なり引き締まった薄い唇は、形よく艶やかだった。
寝台に隠れた水鈴を見つめるその男は息をのむような美丈夫だ。
「昼の刻はとうに過ぎている…。いつになったら起きる気かと痺れを切らしていたところだ」
「……」
それは彼女が一瞬見とれてしまうほど…。
男の発する低音の声は、静かながらに威圧的な性格を持っていた。
“この声は… ”
聞き覚えがあった。
『──女を眠らせろ』
あの時の…!!
あの夜、現れた男の声。
「あなたは誰です…!?」
記憶の糸を辿った水鈴は目の前の男を敵と認識した。
ならば見とれている場合ではない。水鈴は敵意をあらわに男に問うた。