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§ 龍王の巫女姫 §
第5章 炎の李王
「…俺は炎嗣だ」
「えんし?」
それが男の名であると思ったのは後の話だ。
何故なら彼女が知りたかったのは名前ではない。
彼が何者であるのかを知りたいのだから。
「えんし、が何かなど知りませんが…っ、あなたが何者で、ここが何処かを教えて下さい…!!」
「無礼な物言いをする女だ」
「……っ」
男の声が怖くなり、水鈴は唇を引き結んだ。
「ま…、あの村にいたのなら知らなくても無理ないのか?──…国の王の名を」
「…!!」
国の王──!?
武装した男達に『陛下』と呼ばれていた…やっぱりあれは気のせいではなかったの?
「俺がこの李国の王、炎嗣だ。国に生きる者ならば覚えておけ」
李国の若き王、炎嗣( エンシ )。
それを知って見るならば、確かに為政者の風格と張りのある声を持っている。
若いながらも頭を任されるに相応しい、侵しがたい覇気を纏っている。