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§ 龍王の巫女姫 §
第5章 炎の李王
李王のことは村の皆から話を聞いたことがある。
野蛮で残虐、好戦的な男だと…。
「……っ」
その風貌が想像していた男と全く違っていたので受け止めるのに苦労した事実だが、彼が本当に李国の王なのならば…
「…わたしをどうする気…?」
身の危険しか感じない。
「…ふっ、そんなに怯えるな。とって喰おうというわけじゃない」
「喰うですって…ッ」
信じられない…。国の王とは人間すらも食べてしまうというのだろうか。
…水鈴には言葉をそのままに受け取る癖があった。
「…さて」
炎嗣は寝台を挟んで彼女と向きあった。
座る水鈴を立ったまま見下ろし、目を細めて彼女の身体を観察する。
「その髪色以外に特異なところは無いようだな。部屋から逃げるのを諦めたようだが…変わった術を使う気配もないか…」
「……?」
此方を見て呟く
その意味が水鈴には理解できない。
「立てよ」
「え‥」
そして、突然命令された。
なんて失礼なと思ったが、国で一番の権力者なら当たり前なのか…。
彼女自身が意識するより先に、その身体は恐る恐る言われるままに立ち上がっていた。