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[続]天地を捧げよ〜神剣伝説〜
第20章 暗黒の叫び
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北からかなり外れた深い森林――
境界線のように立ち塞がる樹木達を黒い陰が広い範囲で覆い尽くしていた。
空の景色に陰りが帯るとミシミシと嫌な軋みが聞こえてくる。
それは樹木達の悲鳴のようでもあった。
もう少し…
あともう少しの力が…
渦巻く強風が叫びを上げながら高くそびえる樹木達をしならせる。
風の音に混ざって響く不気味な声…
力尽きた樹木達は次々に倒れ、地肌を露に晒していく。
我に力を…
今こそ蔓延る欲深き人間共を無に還す時──
荒れ狂う風が一段と強まり唸りを上げる。
大きな黒い竜巻が森林全体を飲み込むと、大木さえもを根元から根こそぎに巻き上げていく。
渦巻いていた風がおさまり静かになると、そびえ立っていた筈の森林は始めからそこには存在しえなかったように姿を消し、黒い陰はまるで樹木達の命を我が身に吸収したかのごとく増大していた。
「ピクシーの森」また一つ地図に描かれていた土地が忽然と消えてしまった。道に迷うと抜け出す方法はただ一つ。妖精達が飽きるまで遊び相手になること。
そんな迷信も囁かれ、別名「妖精のおもちゃ箱」そう呼ばれていた森を消しさると、黒い陰はゆっくりと何かを求めるように空を浮遊して何処かへ消えて行った。