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[続]天地を捧げよ〜神剣伝説〜
第21章 嘆きの報復
緑の大地も青く煌めく海も──
全ては我のもの
この美しい世界
愚かな人間などに渡しはしない
よどむ空の色
黒い雲が竜巻のように渦を成し轟音を響かせる。
何かの叫び声?
おぞましい嘆き
重くて嫌な音が耳に残る。
アルはふと振り返った。
「やだ…なんだか鳥肌が……」
訳も分からず身震いがおきる。
アルは粟立つ肌をとっさに庇うと何気なく窓から空を見上げた。
丁度、城の役所に出向きアレンからお茶の誘いを受けていたアルは空を眺めながらアレンに話し掛けた。
「ねえ、何だかまた降り出しそうだね…」
「ええ…さ、お茶が用意出来ましたよ」
アレンは窓際で佇むアルに声を掛けていた。
ほのかなアールグレイの薫りが鼻孔をくすぐる。役所の控室で椅子に腰掛けると薦められたティーカップから立つ温かな湯気を嗅ぎ、アルはホッと息をついた。
器を白湯で温めてちゃんと煎れてくれるからアレンの紅茶はとても美味しい。
先程、胸に沸いた不安が直ぐに和らいでいく。
「砂糖をもう一つ如何ですか?」
カップから顔を上げたアルにアレンは優しく微笑んだ。