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[続]天地を捧げよ〜神剣伝説〜
第26章 選ばれし者
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この支配なき西の国「エストリアル」に北の国の耶摩帝国が近かったのは不幸中の幸いだったのかもしれぬ。
酷い怪我の痛みで食事が喉を通らぬ者にはここの漢方の痛み止がとてもよく効いていた。
エストリアルは水も食糧も今のところ大きな問題はない。豊富に湧き出す水があるだけでも南のジャワールよりは幾分かましだろう。
足りぬは医者や薬、そして人手。
援助の手が届いたなら先は明るい──
そう皆も確信していたはずだったのだが…。
「──!…」
鈍い地鳴りが足下を伝った。道端に積まれた石の瓦礫がパラパラと崩れ、作業の手が度々止まる。
「……また何か“来る”かもしれん…」
険しい表情を浮かべたワーグの小さな呟きに、そこに居た民は背筋を強張らせた。
あの日…
黒い曇が天空の要塞、エストリアルの上空を覆いつくした。
山頂に創られたその国の美しい石の建物は一瞬で崩れ塵と化し、想像もしえない惨劇を招いた。
地割れから吹き出した湧き水は建物の下に生き埋めになった者逹の命を奪い、また助けもした。
生きるか死ぬか──
紙一重
すべてが神が下した運命だと人々は納得するしかなかった。
この支配なき西の国「エストリアル」に北の国の耶摩帝国が近かったのは不幸中の幸いだったのかもしれぬ。
酷い怪我の痛みで食事が喉を通らぬ者にはここの漢方の痛み止がとてもよく効いていた。
エストリアルは水も食糧も今のところ大きな問題はない。豊富に湧き出す水があるだけでも南のジャワールよりは幾分かましだろう。
足りぬは医者や薬、そして人手。
援助の手が届いたなら先は明るい──
そう皆も確信していたはずだったのだが…。
「──!…」
鈍い地鳴りが足下を伝った。道端に積まれた石の瓦礫がパラパラと崩れ、作業の手が度々止まる。
「……また何か“来る”かもしれん…」
険しい表情を浮かべたワーグの小さな呟きに、そこに居た民は背筋を強張らせた。
あの日…
黒い曇が天空の要塞、エストリアルの上空を覆いつくした。
山頂に創られたその国の美しい石の建物は一瞬で崩れ塵と化し、想像もしえない惨劇を招いた。
地割れから吹き出した湧き水は建物の下に生き埋めになった者逹の命を奪い、また助けもした。
生きるか死ぬか──
紙一重
すべてが神が下した運命だと人々は納得するしかなかった。