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[続]天地を捧げよ〜神剣伝説〜
第26章 選ばれし者
どしゃ降りの冷たい雨が肌を叩きつける。強い雨のせいで前は見え難く、視界はただ闇を彷徨うばかりだ。
静まり返った夜の街に明りの灯った家はない。辺りは闇の王を恐れ息をひそめたようにしんとしていた。
リストンの街から南に目をやれば、赤ちゃけた煉瓦色の高い屋根が見える。街の中にある大聖堂の屋根だ。その屋根のすぐ下で大きな時計の針がもうすぐ0時を指そうとしていた。
「どこか変わったことはないか?」
「異常なしです!!」
「そうか…」
捜索に当たっていた部下の答えを聞き、ルイスは暗い街道に目を凝らした。雨の降りしきる道、遠くを見つめながら冷たい雨に濡れた身体が身震いを起こす。
“アルが見つかったら城の警鐘を3つ鳴らす”
そう取り決め、ロイドとは一旦別れて隊に指示を出しながらの捜索が続く。他国への兵士の派遣で人手不足の上に、わざわざ死んだ者を捜し出す為に隊員をこの雨の中に駆り出していいものか。
ルイスは考えあぐねたが、ただ、何かを知らせるように緑の光りを放ち続ける右手だけは異様に熱い。
行方知れずになったアルの身体はいったい何処へいったのだろうか──。