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[続]天地を捧げよ〜神剣伝説〜
第28章 女神の降りる丘
少女はその先を見て思わずクスッと笑い、口を両手で隠す。
「リベルタのあの大きな尻なら火山に蓋ができると思わないかい」
「族長!しっかり聞こえてるよ!」
コソッと口にした族長の指先に指された、この村一番のガタイのいい女。リベルタは呆れながら族長と少女を軽く睨んでいた。
二人は肩をすくめ、クスクスと笑いながら雄牛の仕込みをするリベルタの元にやってくる。
手にした山菜の束を調理の台に置くと族長はリベルタに尋ねた。
「湯は沸かしてあるかい」
「もう直ぐ沸騰するよ」
「なら内臓を洗わなきゃね」
リベルタが切り出した雄牛の内臓を族長は水でしっかり洗い鍋に入れる。
軽く湯を通した内臓の炒め物としっかり煮込み、深いダシのとれたスープを手にし、村の皆で遅めの昼食を囲った。
「そりゃあ、すごかったさ!突っ込んでくる雄牛の頭に族長の仕掛けた罠の棍棒が上手い具合にスコーンっと命中!びっくりしたよあたいは」
今朝の狩りの様子をリベルタが饒舌に語る。その脇から族長が口を挟んだ。
「あたしも驚いたさ!あの雄牛相手にリベルタったら身構えて腕捲りするんだからね。牛とまともに張り合おうなんて気が知れないよ!ったく…」
呆れながらも笑う族長の口振りに、村の女達も笑っている。
「いくらあんたがそこらの男以上に逞しいからったって、さすがに雄牛とまともに組み合うのは無理だよ」
「とっさのことだったからつい体がそう反応しちまったんだよ」
少し照れながらリベルタは族長手製のスープに口を付けた。
たっぷり入れた香草のお陰で内臓独特の臭みが食欲をそそる香りに変わっている。
沢山食べてスタミナを付け、また明日も狩りに出掛けなくてはならない。
男が見当たらぬこの村の生計は、狩りを担う逞しい女達で成り立っていた──。