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遅すぎた恋
第3章 高校生の頃の恋愛って…
「…いいよ。」
伸ばされた手が私の背中を力強く抱きしめる。
息が出来なくなるほど強く…。
「戻ってくるから…待ってて。
…桜さん」
友達との誘い…なのに何故…
そんなに切なそうな声を出すの…
どうしてこんなに強く私を抱きしめるの…
「…好きだよ。桜さん」
ゆっくりと腕を離し、
玄関を出て行く。
腕が離れた瞬間、私は力なくその場に座り込んだ。
飛鳥君は二時間経っても帰ってはこなかった。
…三時間…
…四時間…
ようやく…チャイムが鳴り響く。
もう0時を回っている。
ゆっくりと玄関の扉を上げると
その隙間から飛鳥君の顔が見えた。
扉を全て開けると、勢いよく
飛鳥君が抱きついて来た。
フワッと香るのは…
出掛けた時とは違う香水の匂い。
「遅くなりました。
…今日はこれで帰ります。」
「飛鳥君…っ」
何も言わずに帰って行く彼の背中を
ただ見送るしかなかった。
静かにしまった玄関を見つめながら
思い出すのは…飛鳥君の笑顔だった。
…誰があんな顔をさせるの…
その思いだけが私の頬を静かに濡らした。