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覚性
第3章 徘徊〜澄子、小帆里〜
澄子は、残念そうに笑う女子高生にまた引き込まれてしまいそうになった 自分の稚拙で唐突な投げかけが、女子高生の気分を害したのではないか…という懸念が解消された安堵の気持ちと、女子高生のその憂いを帯びた表情が、今までで一番美しく可愛いらしく思う感情が溶け合った 女子高生は切れ長の目を細めながら微笑んだまま、先程澄子が指差した方向に視線を彷徨わせながら、少し思案しているようだった

女子高生の表情にしばらく見とれていた澄子は、今更ながら事の本質に思い当たった それは今、見知らぬ2人が会話している理由だ 今までは目の前に知らない、美しくも可愛い女子高生が現れて、相手に対しての反応を示していただけの澄子であったが、無意識の内に澄子がした質問がの後の沈黙が、澄子に現状を俯瞰するゆとりを与えた

この女子高生は、便意を催していた そしてその便意を解消するために便所を探していたが見つからない そこに澄子が通りかかったのだ そして…澄子はそのはその先にある結論の重大な意味に気づいた 女子高生は先程の澄子の質問に対して首を横に振った 事態を急を要していた

澄子は心配になって女子高生の横顔を見つめた すると女子高生は何か意を決したように小さく「よし」と呟くと、両の膝小僧をくっつけるように手を置き、身を屈めながら再び澄子の顔を覗き込んできた 「そういえば、お名前は」一度目を軽く閉じ、眉を全体的に大きく持ち上げるのと同時に目を開け、素朴な疑問をするように「何て、言うのかな?」再び文節を大きく区切り、そう尋ねながら、にっこり澄子に微笑みかけた その笑顔は、先程までの優しく目を細めていた笑顔ではなく、やや大きく見開かれた目には、比較的強い光が宿っているいるように見えた  澄子は、何かこう、女子高生が緊張しながら丁寧に大事なことを始めたような印象を受けた

澄子が名を告げると、「すみこ、ちゃんね」と女子高生は頷くように反復した いつの間にか澄子の正面にしゃがみ込んだ女子高生は、澄子の両手を水を下から救い上げるように優しくつまみ上げ、二人の顔が向かい合うその真ん中にゆっくりと持ってきた 女子高生の手の平は器を作るように上を向き、その指を上から軽く握るように澄子の小さな手が置かれた そして更にその澄子の指の上に、女子高生の親指がそっと置かれた 澄子の両手の指を軽く撫でる様に左右に揺れた 
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