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覚性
第5章 想望
女性は明るい笑顔を澄子に向けた
「Thank you.(ありがとう)」

美しい女性だった 化粧をあまりしてないのか鼻の両脇にそばかすが浮かんでいる 大きな瞳は茶色く可愛らしかった 落ち着いた声と、少し弛んだ二の腕からは、大人びた雰囲気を感じた

女性は東屋の椅子に腰掛け、ベビーカーを自分の方に向けた 赤ん坊を覗き込み微笑んでいる 澄子は斜めに母子に向かい合う形で座っていた 女性の柔らかい表情に見入っていると、ふと視線を上げた女性と目が合った 女性はまた笑顔を澄子に見せた 澄子の股間が思い出したように熱くなる 澄子は腹部に手を当てた

「Are you feeling OK?(あなたどこか具合悪いの?)」
女性が眉間に皺を寄せ、心配そうな表情で澄子を気遣ってくれた 澄子は視界が黄色く歪むのを感じた 体調が悪いように見えるのかもしれない しかし、実際は澄子の身体は性欲という強い力を持て余している 女性がそんな自分を見ているかと思うと、顔が熱くなるのを感じた おそらく自分の顔は真っ赤な筈だった

「My stomach does not feel good.(お腹の調子が悪いのです)」澄子の口はふわふわとしていた 自分の口から出た台詞が、澄子のこの後の行動を決めていた その事が現実とは思えなかった 息をするのが暑かった 喉の奥が乾燥し、
唾液を飲み込むのが痛かった 座ったまま、両脚に力が入らない事が自覚出来た 時間が止まったように思える やがて、女性の顔が相槌で縦に動いた 澄子に親身になってくれていた

「I want to go to the toilet , but not likely in time.(トイレに間に合いません)」澄子は興奮で声をうわずらせてしまっていた 今自分はどんな情け無い顔をしているのだろう
泣きそうなのか、それとも卑屈に笑っているのか

女性は心配そうに眉間に皺を寄せて、澄子の様子を見守っていた そんな母親の注意を引こうとするように、ベビーカーの上で赤ん坊が両手を動かしている

「I will poop here.Please watch around me.(ここで大便をしようと思います。見張っていて下さい。)」澄子は絞り出すように声を出した 女性は真剣な眼差しで小さく早く3回頷いた 首を回して辺りを見渡し始めた





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