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秘蜜に濡れて
第2章 夢見たいつか。
監督からCMコンテを見せられながら説明を受ける。

過去から未来までを繋ぐ疾走感に溢れた時計メーカーのCM。

三日間の予定でスタジオと屋外の撮影だった。

「あれ?今回は美紅じゃないんだ?」

怜二がスタイリストに話し掛ける。

9secondのスタイリストはここ2年近く橋口 美紅が担当しているが、今日はその姿がない。

「美紅さんなら、買い付けでニューヨークに行ってますよ」

「旅行かよ」

「このCMが終わったら丸2日オフだから頑張れ」

政宗が分厚いスケジュール帳に視線を落としたまま呟いた一言はまさに寝耳に水だった。

撮影日数は変更なしなのに、全員の気合の入れ方が途端に変わった。

メーカーサイドに代理店、大勢のスタッフに撥春は目を凝らす。

けれど、1日目も2日目もその姿を見ることは無かった。

「圭吾、あの子は?」

痺れを切らして三日目の屋外撮影のロケ地で圭吾を呼び止めた。

「あの子って…あいりのこと?」

「来るんじゃないの?」

「あー仕事片付けたらって言っといたけど、もう一人担当してる営業がプレゼンに連れてったから来れねーかも、何、お前待ってんの?」
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