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秘蜜に濡れて
第14章 Key to the cage
控え室へ戻る途中粗方のメンバーに会っていたから、何の気も使わずドアを開けてしまった。

「ごめ…っ!!」

開いたドアを直ぐに閉めた。

中で…怜二と里美がキスしていたから。

足音だって忍ばして来ていないのに、気配にも気付かないくらい夢中になっていたのか。

撥春とあいりは顔を見合わせるとクスリと笑ってその場を後にした。

会場の非常階段のドアを開ける。

遠くにはもうファンが詰め掛けていて、グッズ売り場に長蛇の列が出来ていた。

「…凄い人…」

「うん、すげぇ嬉しい」

あいりは握った手に知らず識らず力を込めていた。

「あいり?」

「…私で…いいの?」

あの人達の中にはきっと撥春の事だけをずっとずっと追い掛けて、夢見ている子がいる。

「あいり、言ったろ?手離すつもりはないって」

「でも…」

撥春はそっと頬に触れると、しっかりと抱き締めた。

「俺にはあいりしか見えないのに」

あいりもまたその背中に腕を回した。

「どうしたら安心出来る?俺の中を全部見せられたらいいのに」

あいりへの想いで埋め尽くされた心内。

どれだけ言葉を紡いでも、どれだけ身体を重ねても。

あいりはそっと瞼を閉じて口付けをせがんだ。

撥春もそれに応えた。

それを繰り返して…いつか重なる日を夢見て。
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