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秘蜜に濡れて
第18章 deep inside
「あいりっ!」

社食で三人分の席を取っておいたあいりに、里美が駆け寄った。

「大丈夫だった?!」

あの電話の事を圭吾と里美だけが知っていた。

ニコルの安堵した表情を見れば、里美がニコルにも話したのだと判る。

「はい、心配かけてごめんなさい、ありがとう」

「相手、誰だったの?何言われたの?」

「わかりません」

詳細など語れるはずもなく、あいりは首を振るしかなかった。

「伊坂には会った?もう帰ってきたでしょ?話した?」

「…まだ、です…」

今朝もメールが来ていた。

返さなければという思いとは裏腹に指が言葉を紡げずにいた。

仕事の山は週末に向かうにつれて終わりが見え始めていた。

「相馬、それ、来週に回していいから今日はもう帰れ」

圭吾が7時を回った時計を指して帰宅を促した。

あいりはきりをつけるとエレベーターに乗り込んだ。

会社を出た途端、見計らっていたかのようにスマホが鳴った。

表示されたのは撥春。

「…もしもし…」

意を決して電話に出る。

「あいり、やっと繋がった…」

10日振りの撥春の声だった。

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