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秘蜜に濡れて
第18章 deep inside
出たものの、喉を締め付ける想いが言葉を閉じ込める。

「あいり?里美ちゃんから、会社休んでるって聞いたけど…何かあった?」

「…っ、ちょっと体調を崩して…でも、もう…大丈夫です…」

「来週のファイナル、来れる?チケット渡したいから会いたいんだけど…」

「…ごめんなさい、休んだ分仕事が溜まっちゃって…明日も出なきゃいけないんです」

「そっか、病み上がりなんだから、無理しないで」

「…はい…」

そのまま沈黙が続く。

電話は切れることもなく。

「…あいり?」

「はい…?」

「いや、いい…



…嘘、会いたい、本当は…今すぐにでも会いたい…」

私も。

その一言が喉に引っ掛かって出て来ない。

代わりに零れるのは涙ばかりで。

「あいり、俺が前に言った事、覚えてる?」

「…っ…え…?」

ズッ…と鼻水を啜る。

「''何があっても俺から離れないで''…俺も、何があっても、あいりを離さないから」

それは撥春の決意。

今のあいりには深く深く刻まれる温かい言葉。

「ファイナル、待ってるから」

あいりが言葉を発する間も無く電話は切れた。





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